意外と見かける上下問題
長年点字出版を生業としていたので、街に点字があれば読み流す癖がついております。
駅のトイレで。
「むむむ??」
ムリムリ読めば、「ひやっな」かな(^^;
もしやこの駅のトイレの個室、みんなこうなっちゃってるのかな?とほかの個室も確認。
よかった。ほかの個室は間違ってなかった。
「ながす」です。
点字、上下さかさまになってることがたまにあります。作るときの間違いじゃなくて施工のときに間違うパターンです。
駅のトイレでよく見るTOTOのコレの場合、点字の位置は上。
施工される皆様、点字が読めなくても位置で判断でOKです。迷ったら確認してくださいませ。
桜もち考2
昔の桜もちのことを調べ続けているが、記述は本によって様々でなかなかつかめない。
『浪華百事談』の「かたくりの粉の水にてときし物を薄く焼き」のくだり。本当か。「水溶き澱粉を焼く」は可能か。「焼く」ではなく煮たり蒸したりする葛饅頭、葛桜のようなものかもしれない。
「柏餅のように糯米で製した」といっても当時の柏餅は現代の柏餅とは違うだろう。「餅で餡を包んだ」とは書いていないのだから、糯米粉の水溶きを平鍋で焼いたのかもしれない。平鍋とは何だろう。どら焼きのようなお菓子を平鍋物と呼ぶようだが、鉄製の平らな鍋、鉄板のようなものという理解でよいのだろうか。
桜もちについて調べていて一番驚いたのは、もともと大福もちは塩味だったということ。桜もちとは何の関係もないのだが、和菓子の歴史本を読んでいたら行き当たった。
埼玉県には今でも「あんびん餅」という塩味の大福がある。塩味の効いた甘い大福ではない。餡にも餅にも砂糖は全く入っていない、塩のみで味付けをした大福である。
先日食べたあんびん餅のパッケージには「塩あんびん餅」とあった。あんびんは漢字で書くと「塩餅」となるらしい。「塩あんびん餅」を漢字で書くならば「塩塩餅餅」になってしまうが、誰もそんなふうには書かない。それだけ「あんびん」という言葉が文字としても定着しているのだろう。
見た目から普通の甘い大福だと思って食べた餅の味は「意外」に尽きる。食べ進むにつれ、さっぱりとして非常に旨いと思った。
そのままではなく砂糖や砂糖醤油をつけながら食べるのが一般的なようだ。和菓子大好き、あんこ大好きな人なら、そのままでは美味しいといえる味ではないのだろう。砂糖をまぶしたくなるのは当然だが、私にとっては「それじゃ台無し」だ。小さいころからあんこも煮豆も煮魚も「甘さ」が苦手だった。
そばつゆは昔は砂糖なしだった。大福も砂糖なし。我々が普段「伝統料理」と思っている砂糖どっさりの料理は、歴史の浅いものなのだろう。シュガーレスな昔の料理は私の嗜好に合うのかもしれない。
今の料理レシピは何でもかんでも絶望的に砂糖を入れすぎる。日本料理で砂糖やみりんを使わないものを探すのは大変なことだ。砂糖なし料理は一般的にはたぶん「不味い」という評価になるのだろう。
「残しちゃいけません」の教育のもと、仕方なしに砂糖あり料理に慣れるよう自分を仕向けてきたけれど、あんびん餅を食べて肩の荷が下りた。砂糖なしが良ければ入れなくて良いのだ。
点字ブロックはできれば歩道にもお願いします
近所の道を歩いておりましたら、歩道の横に点字ブロックが!
「えー??」です。「進んでね、止まってね」と言っております。点字ブロックが。横を見ると、何か棒が立っていますね。インターホンがついています。誰の家?
後ろを向いたら、セブンイレブンでした。
インターホンを押すと、セブンイレブンの店員さんが中から出てきて目の不自由なお客さんの手を引いて中に入れてくれて、一緒に店内を回ってほしいものを棚から取ってくれたりするのでしょう。いいですね!
点字ブロックを見つけるのがとても大変、というところだけ、ネックです。歩道にないので踏まない。あらかじめ「ここに点字ブロックがある」って知ってないと使えない。
一度誰かと一緒に歩いてみて、「交差点から何歩くらい歩いたところ」みたいな目安をつけておくというところでしょうかね。
点字ブロック・マンホールのふた問題
点字ブロックを目安に歩く人は、電車がレールの上を行くように動くわけではない。
白杖を使って歩くとき、人は白杖の先でずっと地面をこすっているわけではない。歩くリズムでポンポンと点字ブロックに軽く当てて確認している。
つまり点字ブロックはレールではなく目安なので、多少切れていても次の1歩2歩で再び点字ブロックを踏めればいい、と思う。
マンホールを避けて「止まって、方向変えて、止まって、方向変えて」と導く点字ブロックがある。おそらくは「万一マンホールのふたが開いていたら落ちてしまうから避けないと」という配慮だろう。
しかし直進の道で急に「止まれ」が出てきても次の1歩はすでに出ている。1歩2歩オーバーするのが普通。「止まれ」ブロックに乗った瞬間に次の1歩を出さずにピタッと止れる人はいないから、かなり余裕をもって方向転換する必要がある。
現実的に考えて「ふたが開いているマンホール」に落ちることはあり得るのか。確率は相当に少ないだろう。方向を変えなくていいと思う。直前まで敷き、直後から敷く、で。
迂回しない。これでよい。ここまで丁寧にしなくてもいい。丸くカットされている3枚のうち、真ん中の1枚は完全になくていい。残りの2枚は直線斜め切りでも実用面では全く問題ない。
ただ、大きなふたには必ず敷いてほしい。長さ1m以上もあるような四角い大きなヤツ。ああいう大きなふたは「マンホール」とは呼ばないのかな。
点字ブロックの匠
この道の点字ブロックは敷き方がキレイ。
斜めに入る部分もしっかりカットして埋める。
「まっすぐ進んで、止まって、方向を変えて、止まって、はい横断歩道」。
こういう場合は、ゆるーんとカーブするとか、大きい角度で斜めに入っていくとか敷き方はいくつかありますが、ここでは「まっすぐ進んで!」
「いったん止まって。方向変えます」
「止まって。方向を変えて。ここから横断歩道です」
渡った先も同じパターン。
マンホールにも敷く!
敷いていないところもありますが。
敷いてなくてよいと思います。たまにマンホールのふたに敷いた点字ブロックがペリペリ剥がれているものを見るのですよ。そのかけらに足を取られてすべったりしたら本末転倒なので、そうなるくらいなら「なし」でいいと。めっちゃ大きなふたは別として。
ちゃつうとワッフル
小学校5年のときから『日本食品標準成分表』を見るのが大好き。
小学校で配られたのは政府刊行物の『日本食品標準成分表』ではなく、どこかの出版社が出していたコンパクトなもの。
今でもよく『日本食品標準成分表』を眺めている。生まれ変わったらこれを作る仕事に就きたい。無人島に行くときには持っていきたい。
A4判589ページという膨大な内容のためか、「時代の先端!」と感じる部分と、「めっちゃ昭和やん」と思う部分の差が激しい。
たとえばお菓子のところに「ちゃつう」とある。「ちゃつう」と聞いて「あー、あれね」という人はどのくらいいるだろう。こんなお菓子なのだが。
「ワッフル」の項には「カスタードクリーム入り」と「ジャム入り」とある。
いま「ワッフル」といえばこれを指すのではないか。
あるいはこんなのとか
もしくはこれ
以上、おしまい……ではないか?
このクリームのところにジャムがはさまっているワッフルは激レアだ。
ほかにも、かわり玉、ブリットル、きりざんしょ、おのろけ豆などなど。想像もつかないお菓子がいろいろ。そのわりに載ってて当然と思えるお菓子が載っていなかったり。こんなところも『日本食品標準成分表』の面白さ。
栄養成分表の解説的な第3章に、ひとつひとつの食品について概要と原材料配合割合が書かれている。材料と配合が分かるのだから、未知なる「おのろけ豆」を自分で作ることができるかもしれないのだ。
『日本食品標準成分表』をただの栄養成分表だとナメてはいけない。レシピ本であり、辞書なのだ。
桜もち考
桜もちについて調べていくと、小麦で作った皮をあんに巻く桜もちには2種類あることが分かった。
ひとつは、白玉粉を水で溶き、砂糖と卵白を入れてよく混ぜ、小麦粉を加えて手早くこねたのちに水で溶きのばして鉄板で焼くもの。もうひとつは砂糖に小麦粉をふるい入れ、水を加えて溶きのばし、鉄板で焼くもの。
山本新六は「柏餅のように糯米で製した(『食べ物語源辞典』)」が、のちに葛粉で作ったとのこと。昨日までは、300年前の桜もちと現在の桜もちはほぼ同じではないかと考えていたが、まるで違うようだ。新六バージョンは「ほぼ現在の柏餅。皮が柏葉じゃなく桜葉」ということなのだろう。当時、小麦粉は使われていなかったのだ。小麦粉が使われるようになるのはいつからだろう。戦後ということもあり得るだろうか。
葛粉で作る桜もちは江戸時代全国にあったようで、『浪華百事談』には「冬春はかたくりの粉の水にてときし物を薄く焼き、中に白小豆の餡を入れて包み、その上を桜の葉にて挟み、夏秋には吉野葛にて……」とある。
暑い季節と寒い季節で澱粉を変えるところが興味深い。寒い季節にはかたくり粉で作るほうが良いのはどうしてだろう。寒くても硬くなりすぎないといった特徴があるのだろうか。
現在ではかたくり粉といえばじゃがいも澱粉であり、かたくりの根からとる本物のかたくり粉は一般人には入手できない。当時はそこらじゅうにかたくりが自生していて、その根から手間暇かけて澱粉を取ることが生業として成り立っていたということなのだろう。
吉野葛なら手に入るから、再現して作ってみようか。「吉野葛」の名で売られていても、中身の半分は甘藷澱粉という「ブレンド葛」が多いから気を付けて買わなければならない。
沖縄の家庭菓子に、甘藷澱粉を水でこねて揚げたものがある。たしか砂糖を加えないレシピであった。王朝があった古き良き時代に、訪ねてきた客人の顔を見てからこね始め、揚げたてを供した菓子だそうだ。
私は、吉野葛、甘藷澱粉、かたくり粉といった澱粉類に縁遠く、日常的にはじゃがいも澱粉である片栗粉を料理に使うのみである。昔、風邪の時に飲まされた「葛湯」はとてつもなく甘いだけであまり美味しいとは思えなかった。しかし澱粉をきちんと使いこなすことができたら、とても美味しい菓子ができるに違いない。
しばし澱粉と向き合ってみよう。